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「女性が襲われてる通り魔事件だけど、人狼の仕業なんじゃないかって噂よ」
「ええっ、そうなの?」
「なんでも人狼がよく使う薬物で前後不覚にされてしまうんですって」
「人狼は衝動的で好色だっていうものね」
「怖いわね。リリスちゃんも気をつけてね」
「……はい」
奥様方の話に相槌を打ったものの、リリスの気持ちは少し重かった。
リリスの一族がこの国に定住を決めたのは、周辺の国と比べて獣人と亜人の比率が高いからである。もしサキュバスだとバレても、比較的理解を得やすいだろうとリリスの祖母は踏んだのだ。
それでもリリスは王都で暮らすようになってから、獣人と亜人は普通の人間とはやはり扱われ方が違うと感じていた。リリスも普通の人間だと思われているから可愛がってもらえているけれど、サキュバスだと知られたらみなさんの反応は変わってしまうかもしれない。
全てを正直に言えばいいという訳ではない。よい関係を保つために言わない方がいいこともある。リリスは自分がサキュバスであることを決して明かさないようにしようと改めて決意した。
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