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リリスの血の気はザーッと音が聞こえそうな勢いで引いた。
週に一度とはいえ、ヴォルフィは一晩に四、五回は精を注いでくれている。寝ぼけたリリスがつい甘えてしまって、翌朝もう一、二回致してしまうことも結構ある。普通の人間同士でも多すぎる回数だというのに、いわんやサキュバス相手をや。
「本当に無理強いするような男は駄目よ」
「リリスちゃんを大事に想っていれば我慢できるはずだからね」
「行為はいつかしなくなるんだから、それ以外のところで判断しないと」
「は、はあ……」
むしろ自分が無理強いしている側では? とリリスはとても落ち込んだ。ヴォルフィの「足りない?」という笑顔つきの問いかけに甘えすぎていた。飢餓感に苦しめられていた頃を思えば、今はとんでもなく恵まれているのに。一度贅沢を覚えてしまったら、精を注いでもらうだけでは足りなくて、リリスはヴォルフィと身も心も重ね合って満たされたいと思ってしまっている。
ヴォルフィは肌を重ねる距離だと甘い香りが強くなる。決して嫌な匂いではなく、むしろ好ましいよい香りだからこそ、絡めとられているように感じてしまう。リリスは身も心もとっくに堕ちているのに、どうして逃げられるだろう。
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