サキュバスリリスの独り立ち

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 伝手(つて)のない女子にできることは少ない。リリスは役場の求人情報を見て、レース工場に勤めるのはどうだろうかと考えた。趣味の刺繍と裁縫を活かせそうだったからである。驚くほどあっさり採用され、未来は明るいとリリスは思った。職場の奥様方もみなさん優しく、リリスを自分の娘のように可愛がってくれた。 「あらあら、まあまあ! 新しく入ってきたお嬢さんは、お人形さんみたいでとっても可愛らしいわねえ! お名前は?」 「リリスです」 「リリスちゃん、これおいしいからお食べなさい」 「これもどうぞ」 「お二人ともありがとうございます。いただきます。……ああ! どちらもとてもおいしいです!」 「リリスちゃんの澄んだ青い瞳には、淡い緑のレースが似合いそうね。白い肌にも映えそうだし」 「長くてとても綺麗な金髪だから、焦げ茶の繊細なレースであえて少し大人っぽくまとめてみるのも素敵かもしれないわ」 「レースは売り物なのではないですか?」 「端材や糸飛びなんかの不備があったものは、自由にもらっていいことになっているの。小物を作ったり、自分の服に縫いつけたり、みんないろいろしているわ」 「個人で売ることは禁止されているけど、出来のいいものを作ったら、商品として売り出してもらえることもあるのよ」 「そうなんですね。お裁縫は得意なのでいろいろやってみます!」
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