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リリスは端的に言って他者の心情に鈍い。サキュバスの能力が顕現してからというもの、男性とほとんど関わりを持っていなかったので、男心はなおのことわからない。要はヴォルフィの気持ちが気になるのにまるで見えていないのだ。
ヴォルフィは行為中とても丁寧にさわってくれるけれど、それ以外は指一本ふれない。彼は親切だから、人助けでリリスに精を注いでいるだけなのかもしれない。それにしては行為中に優しすぎはしないだろうか。他の女性にもあんな風に優しいヴォルフィを想像するだけで悲しくなってしまう。
本当は身体を重ねるだけでは嫌だ。性行為を伴わなくても一緒にいたい。会うのが店でだけなのは自分と一緒にいるところを人から見られたくないからだろうか。
医療従事者として放っておけなかっただけで、恋心を告げて困らせたらどうしよう。リリスが恋心を抱いているのは確かだが、ヴォルフィから拒まれて精を注いでもらえなくなったら死活問題であるのも事実だ。
可能性を行きつ戻りつ、リリスの心は千々に乱れる。純粋な恋心だけではなく、嫉妬や打算にまみれた己の醜さを思い知らされ、リリスは苦しくなった。
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