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サキュバスリリスに声を掛ける三人の男
リリスは翌日の夕方までこんこんと眠り続けてしまった。完全に精神が寝逃げしようとしている。部屋に閉じこもっていても気分がくさくさするだけなので、リリスはふんだんにレースを縫いつけたドレスと羽織ものを纏い、外へ出ることにした。奥様達が「このレースはリリスちゃんに似合いそう」「これも」「こっちはどう?」と手持ちのレースを少しずつ分けてくれたのだ。リリスはこれを着てヴォルフィと会いたいなと思っていた。
鏡に映ったリリスは小さな女の子が好む人形のようだ。服は可愛らしくてリリスにとてもよく似合っているし、レースに高級感があるので特別な雰囲気も漂っている。リリスは普段あまりしない化粧をうっすら施す。本来の顔立ちと服は少し幼いのに、化粧で大人っぽさと色気が足された。相反する要素は不思議に融合して、鏡の中のリリスにはどこか淫靡な雰囲気が漂っている。
準備をするうちに日がとっぷり暮れた。普段この時間はもっと人通りが少ないのに、お祭りの日だからだろう、街は仮装した人々が楽しそうに行き交っている。リリスの前を恋人同士が何組も通り過ぎた。手をつないだり、腕を組んだり、腰に手を廻したり、ふれている箇所はさまざまであるが、みんなとても楽しそうな笑顔は共通していた。ヴォルフィと手をつないで一緒に過ごしたかったな、とリリスは思う。
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