サキュバスリリスの独り立ち

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 リリスにはどこか世話を焼きたくなってしまうところがあった。華奢で可愛らしいだけではなく、家族や親戚との仲が良好で何かしてもらうのに慣れていたというのもあるだろう。何かしてもらったらリリスは素直に受け取り、必ず笑顔でお礼を言うので、相手はついついまた何かしてあげたいと思ってしまうのだ。どこへ行ってもなんとなく似たようなポジションに落ち着いてしまう。そういうことはある。  こんな雰囲気なので仕事もゆるいのかと思いきや、むしろ逆であった。奥様方は黙々と丁寧に作業をこなしていく。全工程が真剣勝負で、貴重な材料を無駄にすることなど絶対に許さない無言の圧があった。自由にしていいレースという存在は検品が厳しいからこそ生まれたのである。工場に採用される一番の基準は自分に厳しいことで、自由にしていいレースの収納は「屈辱の(はこ)」と呼ばれていることを、リリスは後から知った。
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