53人が本棚に入れています
本棚に追加
とにかく、あなたが好きですと告げて、身体が心配だから負担を軽減する方法を一緒に考えてほしいと言おう。リリスがそう思った時、ヴォルフィは震えながらリリスの上から退き、頬に手を当てた。
「……しまった。薬を飲み忘れて……。どうりで感情の抑制ができない訳だ」
明らかに焦っている様子のヴォルフィに、リリスは訊ねる。
「どうしたんですか?」
「リリスさん、逃げて。早く……!」
「え?」
「いいから逃げて! これ以上嫌な思いをさせたくないから! もう、抑えきれな……」
ヴォルフィは最後まで言葉を発することができなかった。
抵抗むなしく、彼はリリスの目の前で人型から四つ足の獣へと姿を変えていった。
全身が少しずつ毛皮で覆われていく。シーツにふれた両手は指がどんどん短くなり、爪が鋭く尖る。鼻は少しずつ伸びて先端が黒くなり、少し開いた口からは白い牙が見える。耳は形を変えながら頭の上にピンと立ち、しなやかなしっぽも生えてきた。
焦げ茶色の毛並みが美しい狼。
獰猛な生き物に変化したはずなのに、確かにこれはヴォルフィだとリリスは納得していた。雰囲気は不思議といつもと変わらない。優しい光を放つ丸い琥珀色の瞳。
最初のコメントを投稿しよう!