サキュバスリリスとヴォルフィの気持ち

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「ステレラってあの丸い花……?」 「そう、あの花。狼を殺すほどの毒性があるから、東方の国では狼毒(ろうどく)と呼ばれてる。でも、処方すれば薬にもなるんだ。リリスさんに最初に買ってもらった塗り薬の原料もステレラだよ」  甘い香りのする、よく効く塗り薬。あの薬の匂いを嗅いで、リリスはヴォルフィのことをよく思い出していた。ヴォルフィが長年飲み続けたステレラの香りは染みついて、もはや彼自身の匂いになっていたのだろう。 「人狼は気のいい者もいればそうじゃない者もいるけど、基本的に衝動的で、感情の起伏が激しくて、派手好きで、享楽的な交わりが好きだ。僕は丁寧で繊細な行為が好きだけど、本性は狼だから性欲が強くて、同族でも異種族でもなかなか合う子を見つけられなかった」 「サキュバスらしくない私と同じね」 「うん。僕もおんなじ、一族の外れ者だよ」  ヴォルフィは笑いながら言うけれど、どこか寂しそうで、リリスは返す言葉を見つけられない。リリスが黙っているので、ヴォルフィは話を続ける。 「全てを話さなければいけないとも、全てを受け入れてほしいとも、僕は思わない。でも、どうしても無理なことはある。僕は本質的に少しうっかりしているから、人狼だとバレる日はきっと来るだろうと思った。その前に自分から伝えなきゃってずっと考えていたけど、リリスさんに受け入れてもらえるとは思えなかったから、なかなか言えなくて。人狼なんてわがままで凶暴な印象しかないだろうし」 「そんなこと……」
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