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「うまくいってると思ってたのに、僕が人狼だとわかったら『騙された』って言われて、終わったことあるよ。無理だったんだろう」
ヴォルフィが淡々と言うので、却ってリリスの胸は痛んだ。
リリスは思い出していた。民家の被害の話をした時、ヴォルフィが暗い表情を浮かべていて、何か違和感があったこと。動物は好きかと訊ねられたこと。
「華奢で可憐で可愛らしい外見の好みと、性欲が強くて複数回付き合える体質と、相手は一人だけがいいっていう考え方と、あまあまなのが長時間でも嫌がられないって嗜好と。それだけでも揃うことないのに、一緒にいて楽しくて嬉しいなんて、ほんと、ないんだよ……」
ヴォルフィの獣の耳がへにょんと垂れた。見えないけれど、きっとしっぽもしょんぼり垂れているのだろう。
リリスはヴォルフィの耳に手を伸ばし、優しく撫でながら言った。
「私も、そう思うわ」
ヴォルフィの垂れていた耳がピンと立った。わかりやすくて、リリスは思わず笑ってしまう。
「狼でも、いい?」
「他の狼は、嫌。サキュバスの私を受け入れてくれたヴォルフィさんだから。私はただ、恋人でもないのにヴォルフィさんにたくさん負担をかけているのが、苦しかったの」
「負担じゃないし、恋人になりたいし、呼び方さっきのがいい」
「さっき?」
「ヴォルフィって、呼び捨て」
「じゃあ、私もリリスって呼んで。ヴォルフィ」
「リリス」
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