サキュバスリリスの相手は一人

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サキュバスリリスの相手は一人

 翌朝、リリスが目を覚ますと、ヴォルフィから優しい瞳で見つめられていた。彼はリリスと目が合うとそっとくちづけて微笑んだ。 「おはよう、リリス」 「おはよう、ヴォルフィ」  ヴォルフィはとても嬉しそうな顔でもう一度リリスにくちづけ、耳元で囁く。 「全然足りないから、もっかいしたいんだけど」  いつもならリリスに問われていた言葉。今朝はヴォルフィの方から求められている。リリスは笑顔で頷き、今度は自分からくちづけた。  だが、二人の睦み合いは来訪者に邪魔されることになった。ヴォルフィは最初、無視を決め込もうとしていたが、扉を叩く音が全く止まなかったのだ。ヴォルフィは苦々しい表情で眉を寄せると、服を纏い、対応のために店へ向かった。 「あのねえ! 僕は今回もう大概協力したと思うよ! これ以上僕の私生活を邪魔しないでほしいんだけど! 誰よりも大切な彼女を失いかけたんだからね!」 「その協力のおかげで二件とも無事解決したから、一刻も早く知らせなきゃいけないと思ってさ」 「そういうのいいから!」  珍しくヴォルフィが大声を上げているので、気になったリリスも服を纏い、そっと店へと向かう。 「ああ、昨夜の! 絶対ヴォルフィの好みだと思ったんだ!」  来訪者の男性はリリスの姿を認めるなり嬉しそうに言う。しつこく扉を叩いていたのは、昨夜リリスに声を掛けてきた警邏隊の獣人だった。
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