サキュバスリリスの相手は一人

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 ヴォルフィは苦々しい表情で続ける。 「犯人はただの人間だったけど狡猾で、人狼がよく使う薬物で女性の気を失わせたり、人狼が欲望を制御しづらくなる満月の日をあえて選んだりして、あたかも人狼の犯行であるように見せかけてた。なかなか捕まらなかったのは、人狼対策が裏目に出てたんだ」  リリスはヴォルフィと初めて関係を持った日のことを思い出していた。あの日も満月だった。運が悪ければ、ヴォルフィの店に着く前に襲われていたかもしれなかったのだ。 「犯人は相手が抵抗できないことを見越して、背が低くて華奢でか弱そうな可愛い女性ばかり襲っていたらしい。警邏隊のあいつから一度冗談めかして『お前が犯人だったりして?』なんて言われたんだけど、本当にむかついた。僕は好みってだけで襲ったりしないのに」 「ヴォルフィはそんなこと、絶対しないよ」  リリスがきっぱり言うとヴォルフィに笑顔が戻った。 「納屋を壊したり家畜を襲ったりしてた犯人も捕まったんだけど、そっちはまだ小さい人狼のこどもだった。親に捨てられて、どうしていいかわからなくて、とにかく何か食べたくて必死だったんだって。二つの事件が錯綜していたから話が長くなって、せっかくリリスと想いが通じ合った翌日の貴重な時間が奪われて」 「私達はこれからたくさん会えるからいいじゃない」 「まあ、そうだね」
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