サキュバスリリスの相手は一人

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 口を半開きにして話を聞いているリリスを見て、ヴォルフィは問う。 「どうかした?」 「ヴォルフィ、思っていたよりも、こどもっぽかったんだなあって」 「……何度か言われたことある。勝手にはしゃいで独りよがりだし気持ちが重くて面倒だって」 「面倒とは思わないけど、聞かれてないのに昔付き合ってた人の話はたぶん駄目だよ」  ヴォルフィが明らかにしまったという表情を浮かべるので、リリスは思わず声を上げて笑ってしまう。職場の奥様方だったら「過去の女を匂わすような男との結婚は考え直した方がいい」とおっしゃるだろうなあ、と思いながら。ヴォルフィがリリスを信頼しているからこそ、安心してぽろっと出ているのだろうけれど。 「過去に未練なんかまるでないから! 振られない限り僕の方は好きな気持ちが変わらないし!」 「そうだろうけど。それに結婚前提で話を進めてるけど、私が承諾するとは限らないじゃない」 「確かに!」 「素敵な求婚にとても憧れているの。楽しみにしているわ」 「それは……! 断られないように、とびきり素敵な言葉をじっくり考えないと!」  断る訳はないのだが、リリスの言葉にきちんと耳を傾けて素直に返してくれるヴォルフィを、彼女はとても可愛いと思った。
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