サキュバスリリスの相手は一人

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「狼は一夫一妻で相手のことをとても大切にする動物だからね」 「そうなの?」 「そう。人狼が不特定多数と交わっちゃうところは、人間側の特徴なんじゃないかと僕は睨んでいる」 「ヴォルフィはすごく狼らしいんだね」 「リリスもすごくサキュバスらしいと今は思うけど」 「サキュバスらしくなくて生きづらかったんだけど?」 「充分だよ。性欲強いし、誘惑上手い」 「別に誘惑なんか……」  ヴォルフィはリリスと目が合うと身を乗り出して素早く唇を奪い、目を丸くしている彼女に飄々と言った。 「ほら、誘惑された」 「この狼、人のせいにした」 「リリスがここに越してくるまでは、これまで通り週末に回数多めにしないといけないし。そうじゃない?」 「……そうだけど!」  ヴォルフィはげらげら笑うと、リリスのすぐ隣に移動する。もう一度そっとくちづけた後、口を大きく開けてリリスの口の周りをとても優しく噛み、彼女を抱きしめた。  二人は異種族で、どちらも一族の異端で、外れ者だ。二人とも欠けたところだらけで、望みがなにもかも叶うような人生も送ってきていない。全ての意見が一致している訳ではないけれど、無理をしなくてもよくて、凸凹を補い合うようにしっくりきていて、なによりお互い大切に想い合っているから、一緒にいると人生が楽しい。そういうことはある。
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