薬師ヴォルフィの理想と現実・その2

3/8
前へ
/131ページ
次へ
 ヴォルフィが警邏隊に納品した薬の評判は上々で、それからも犬獣人は頻繁に薬局へやってきた。注文書を持ってくることもあれば、怪我をして個人的に訪れる場合もあった。 「ヴォルフィ、警邏隊の納品以外に余裕ある?」 「ありますけど」 「じゃあさ、薬の卸先、増やせる?」  未だに一般客はほとんど来店しない。ヴォルフィは二つ返事で話を請けた。  警邏隊の犬獣人が紹介してくれたのは、主に獣人と亜人が働いている病院だった。 「よい薬を納品してくださってとても助かります!」  人のよさそうな病院長が嬉しそうな笑顔でヴォルフィに言う。これまでは粗悪なのに高価な薬を納品する薬師にばかり当たっていたらしい。足元を見られる。それはヴォルフィも同じだ。新参者だからだろう、薬師ギルドで紹介された薬剤原料の卸業者は少し吹っ掛けてくるか質の悪いものを平気で売りつけてきている感があった。
/131ページ

最初のコメントを投稿しよう!

37人が本棚に入れています
本棚に追加