薬師ヴォルフィの理想と現実・その2

7/8
前へ
/131ページ
次へ
「ジュージン!」  まだ幼い男の子が石を投げ、犬獣人の額に当たる。 「……ってえ……」 「どうしてジュージンがけいらたいのふくをきてるんだよ!」  犬獣人が男の子の方を向いた。額から流れる血を見て、男の子は自分のしたことの重大さにようやく気づいたのか、その場にへたり込んでしまう。犬獣人はゆっくり男の子に近づき、優しく声を掛けた。 「人間にも、獣人にも亜人にも、動物にも、石を投げるのは駄目だ。特に動物は、何も言えないだろ」 「ジュ、ジュージンは、わるいことをするやつだって……じいちゃんがいってたから……」 「おじいさんは何かされたのか? 悪いことをした奴がいたら言ってくれ。獣人でも、亜人でも、人間でも、捕まえて調べる。みんなが安全に暮らせるように、俺達はいるんだから」  何も言えない男の子に、犬獣人は手を差し出した。 「立てるか?」  男の子は手を借りて立ち上がると、犬獣人に抱きついて、ごめんなさいごめんなさいと謝り続けた。犬獣人は少し困った表情を浮かべ、わかればいいと言って、男の子の頭を撫でた。
/131ページ

最初のコメントを投稿しよう!

37人が本棚に入れています
本棚に追加