薬師ヴォルフィの理想と現実・その3

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薬師ヴォルフィの理想と現実・その3

 ヴォルフィが店を構えて三年が経過し、一般客もずいぶん店を訪れるようになっていた。これはディーノのつながりによるところも実は大きい。  警邏隊の犬獣人ディーノは、直属の上司と相性が悪い。だが、かなり上の役職者からなぜか気に入られていて、目をかけてもらっているのだ。破天荒なタイプが、几帳面な中間管理職とはそりが合わないのに、大物とはなぜか馬が合ってさりげなく生き延びていく。そういうことはある。  ある日、ヴォルフィはディーノから、いい皮膚薬はないかと訊ねられた。役職者の奥様が手荒れに悩んでいて、おすすめの薬はないかと問われた、ということだった。 「ああ、それならこの薬がいいんじゃないかな」  ヴォルフィはステレラから作った皮膚薬をディーノに渡した。副作用が少なく、そんなに人を選ばない薬だ。ヴォルフィは皮膚薬を人狼の力を抑制する薬と併せて作っていた。原料は同じだし、作り方が簡単で、日持ちもする。自分の薬のついでに作るものだから、儲けを求める気持ちもなくて、安い価格で提供していたのだ。  皮膚薬を使用した奥様は効果にいたく感激し、同じく手荒れに悩む職場の仲間と知り合いに、ことあるごとに勧めてくださったそうだ。こうして口コミでヴォルフィの店を訪れる客が少しずつ増えていったのである。素晴らしき哉、奥様連絡網(ネットワーク)
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