薬師ヴォルフィの理想と現実・その3

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「ヴォルフィはさあ、狼に変身しねえの?」 「満月の時は変身しやすいけど、普段は薬で抑えているから、ほぼ人間だね」 「へえ! 俺は変化(へんげ)しないからなあ。両方楽しめて、面白そうでうらやましいよ。変身しようと思ってできるもん? 見てみたい」 「たぶんできるけど、やだ」 「えー、ケチ」 「ケチじゃないよ。いざ見たら怖がられるんだよ、狼は」 「それで振られたとか?」  ディーノが冷やかすように言うと、ヴォルフィは黙ってしまった。 「悪い。冗談の気だった」 「狼は怖い生き物なんだよ。仕方ない」 「まあ、女は星の数ほどいるし、次だ、次! ヴォルフィはどんな子がいいんだ?」 「そんな簡単に割り切れないよ、ディーノ」 「いかにも人外らしい感性の持ち主だなってよく言われる!」 「それ、たぶん褒められてないよ」 「でも俺はこの図太さで生き延びてきた!」  それくらいの方がいいかもしれない、とヴォルフィは苦笑し、質問に答える。 「華奢で可憐な雰囲気の子が好きで、初めて付き合った子がまさにそんな感じだったんだ。手を握るだけで真っ赤になるくらい純情だったから、キスもできずにいたら、強引な男に寝取られて、デキ婚された」 「うわ」 「向こうから僕を選んでくれる女の子は、みんな気が強くてぐいぐい来るタイプで。いざ付き合ったら、優柔不断でいらいらするとか、前戯がしつこくて鬱陶しいとか、追いかけるのが楽しいのに気持ちが重いとかで、すぐに飽きられて振られた」 「ああー……」
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