薬師ヴォルフィの理想と現実・その4

1/7
前へ
/131ページ
次へ

薬師ヴォルフィの理想と現実・その4

 ヴォルフィは貧血薬の試供品をつい多めに渡してしまった。リリスが好みのタイプだったからサービスしてしまったことは否定できないが、具合が悪い人を放っておけなかったことの方が大きい。健康になってほしいし、薬はある程度飲み続けた方が効果を発揮しやすいから。  リリスは次の金曜にヴォルフィの店へやってきた。薬のおかげでとても身体が楽だというリリスの言葉に、ヴォルフィも嬉しくなった。  貧血薬を継続してもらうことが決まり、会計の際リリスが発した言葉にヴォルフィは驚いた。彼女は「試供品でいただいた分もお支払いします」と言ったのだ。これまで試供品を気に留める客はほとんどいなかった。もらって当然だと思う客がほとんどで、丁寧な客が次に来た時に礼を言うくらいだった。ヴォルフィはほんの少しだけ持っていた下心を恥じた。外見が可愛らしいだけではなく、なんていい子なのだろうか。
/131ページ

最初のコメントを投稿しよう!

38人が本棚に入れています
本棚に追加