サキュバスリリスとヴォルフィの店

2/5
前へ
/131ページ
次へ
 近くで話すヴォルフィは清潔感があって、薬草と思しき植物の爽やかでほのかに甘い香りがした。人工的な香料の感じはしない。ヴォルフィは不必要な接触をしないように心掛けているのか、結局リリスの手にふれることはなかった。彼の対応にリリスは安心し、更に好感を持った。  ヴォルフィから椅子を勧められたので、リリスはありがたく座らせてもらうことにした。手に乗せてもらった塗り薬をゆっくりなじませる。沁みることはないし、じんわり皮膚に保護膜が作られているような気がした。 「薬の反応を見ている間に、他にも困ったことがあればご相談に乗りますけど、何かありますか?」 「……貧血がひどいんです」  男性の精気を取り込めていないせいで、身体が慢性的に疲労気味なのだから、リリスの言葉は嘘ではない。薬でなんとかなるなら、それに越したことはないのだ。 「若い女性は貧血にお困りの方が多いですよね。飲み薬の試供品を少し差し上げますから、合うようでしたら、またおいでいただけるとありがたいです」  しばらくしてヴォルフィはリリスにもう一度沁みていないかと訊ね、店の奥に戻った。リリスは店内を眺める。綺麗に掃き清められていて、商品も整然と並べられている。室温も温かすぎず寒すぎずでちょうどよく、とても居心地がよい。薬局や病院特有の消毒の匂いも清潔な感じがして、リリスは結構好きだった。
/131ページ

最初のコメントを投稿しよう!

34人が本棚に入れています
本棚に追加