薬師ヴォルフィの理想と現実・その4

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 別の要因。自分はサキュバスだとリリスが苦しそうに告白するのを聞いて、ヴォルフィは至極納得していた。貧血薬では駄目な訳だ。リリスが病気を抱えている訳ではないことにヴォルフィはほっとし、非常に簡単な解決方法を思いついたので、彼女に部屋へ入るよう勧めた。  戸締りを終え、ヴォルフィはふうと息を吐くと、自分の唇を指でそっとなぞる。リリスからくちづけられた時は急な出来事に驚くばかりだったが、今になって胸が高鳴っていた。  薬局に来てくれたということは、リリスはヴォルフィと交わってもいいと思っている。ヴォルフィはリリスのことが好きだ。ヴォルフィがリリスに精気を与えれば一件落着ではないか。  サキュバスだからいろんな男と経験があるのかと思ったら、リリスは初めてだった。まさかの理想全部乗せ。一度目の交わりを終え、文字通り飢えを満たせているかどうかが気になって「足りない?」と訊ねたところ、リリスはとても恥ずかしそうに顔を赤らめ、我慢できない様子で小さく頷いた。  ヴォルフィはこういう反応をされたことが実はない。「もっとガンガン攻めなさいよ」とダメ出しされたり、「そういう人を試すような訊ね方はうざったい」と冷たく言われたり、そんな経験しかなかった。非常に興奮して、有頂天になり、最後の方はリリスの飢えを満たすためではなく、ただただ夢中で抱いていた。
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