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ごくり。
碧葉と律は知らず生唾を飲み込んだ。
宗介ほどの手練れが何と評するのか、胸の辺りがぎゅっと縮むような思いがする。
「素材としちゃあ、最高の部類だけど——まだまだ遊べるし、まだまだ面白くできますね」
碧葉は思わず目の前の宗介を仰ぎ見た。
「まだ改善の余地があると……少なくとも私には、これ以上何も思いつかぬが……なるほど商売人とは、かくも貪欲であるべきなのか……」
宗介は白い歯を覗かせ笑う。
べらんめぇ調はすっかり鳴りを潜め、すっかり気持ちの良い男——千両役者風の面目躍如である。
「はは、単に欲の皮がつっ張ってるだけなんですけど。いや例えばね、お侍様。さっきも凪人と話してたんですが、例えばあの折箱に……」
「……待て、宗介。私のことは碧葉でかまわぬ。皆も私をそう呼んでいる」
「お、いいんですか? なら遠慮無く! あのね碧葉様、こっちの凪人ってのは、なかなかの絵師なんですよ。だから……」
打ち解けた様子で話し出した碧葉と宗介の様子に、律と凪人は顔を見合わせ、微笑みを交わす。
よかった……!
二人は声を出さず、口の形だけで互いに思いを伝えた。
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