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「……真白様」
「……決まったか」
「律——。子狐の名は、律と……」
「ほう……律、とな——」
相分かった。
真白は微笑みながら頷くと再び子狐に向き直り、高らかに言祝ぎを紡いだ。
「……人より名を得て人になれ、己の名に体を表せ、そなたは望まれし者——幸え、律よ!」
宙に浮く子狐の体から吹き出すように光が溢れ出し、あまりの眩しさに碧葉は腕を顔前にかざす。
圧倒的な光、その中で子狐の姿は、おぼろげな輪郭だけになった。
「……!」
全ての言葉を忘れ、ただ見守る碧葉。
ゆらゆらと揺れながら、光の中で何かが徐々に大きさを増していく。
赤子のように丸まった体が少しずつ、伸びをするかのように広げられて——。
「ああ、わ、わ、わあああっ!」
驚きの声を上げる律の姿は、もはや子狐のそれではない。
やがて雪の上に崩れ落ちたのは、光そのものと言うに相応しい、美しき少年だった。
年の頃は、武士で言えば元服前の十二、三あたりだろうか。
身を包むのは平安装束の水干と括り袴で、そのどちらも子狐の毛並みに似た山吹色をしている。
かつて鼻下の毛色がそうであったように、瑞々しい肌は抜けるように白い。
黒目がちの潤んだ瞳と真っ直ぐ通った鼻筋には、どこかあの愛らしい子狐の面影が残っていた。
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