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律の言葉は続いている。
「碧葉様、母さまがいつも言っていました。優しいあの方にいつか、恩返しをしましょうねって。元気に……な……って、一緒に、恩……返しを……」
律は碧葉から身を離すと、慌てて目をこすった。
「嫌、だ……何だろ、目から、水が……息、も……苦しい、金星ちゃん、銀星ちゃん、僕の、体……壊れて、る……?」
金星ちゃん…?
銀星ちゃん…?
うふふふふ、とくすぐったそうに双子が笑う。
「壊れてない。ね、銀星ちゃん」
「壊れてない。な、金星ちゃん」
真白は律に向かい、頷いてみせた。
「それは律、涙というものじゃ。人は様々な思いが溢れると……それを涙に溶かして、泣く」
律は、泣き笑いのような顔で碧葉を見る。
「涙……。人の、心は……忙しい、ですね、その、ごめんな、さい、碧葉様……」
碧葉は律の肩にそっと手を触れた。
「案ずるな、律。泣きたいのなら——泣いたらいい」
律は縋るように碧葉を見上げ、胸の前でぎゅっと指を組む。
「でも……でも僕は今、泣きたく、ないです。碧葉様に、御心配を……掛けたく、ない……」
律の言葉に碧葉は思った。
涙、か。
私が最後に涙を流したのは、いつだったろう。
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