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宗介はお得意の、してやられた、の顔をする。
「げ。お侍様もなかなかですね。商売なんざ何にも知りませんってお顔しながら、しっかり俺らを動かす算段なさって……」
とは言え正直、悪い話ではなかった。
——この商売始めた頃は、まだ信用も実績もねぇから、前金なんざとんでもねえ、出来高制が当たり前だったしな……。御新規さんの狐茶屋じゃ、仕方がねぇか。金がねぇのも本当だろうし。ま、そのうち結果が出て、狐茶屋が潤ってくりゃあ……自然と風向きだって変わるだろうしな。
ちらっと凪人に視線を合わせた宗介は、にっと悪戯な笑みを浮かべる。
「そんなら、お侍様。俺たちからも……ひとつ、御提案させてくださいよ。俺らに——何て言うか、もうちょい狐茶屋を派手にする仕掛けを……させちゃくださいませんか」
宗介は勢い良く両手を組んで、指の骨をぽきぽき鳴らした。
「こいつぁ俺らにとっても、初めての試みなんですけどね。まあ今まで色んな現場を見てきましたが……俺らにとって一番辛ぇのが、実物がしょぼくれてるってことで」
「いや違うんですお侍様、宗介は狐茶屋がしょぼくれてる、って言ってるんじゃなくって……」
慌てて声を上げる凪人を、碧葉は苦笑で制する。
「……案ずるな、続けてくれ」
「要はね、ど派手にこっちが喧伝したのに、見に行ってみたらこれかよ、ってのがあるんですよ、中には。最初のうちは選ばねぇで仕事受けてたから、俺らも随分そういう煮え湯、飲まされちまって。おい、こないだのあれは何だよ、なんて瓦版の客に言われちゃあ、その後の信用に関わりますからね。だから今じゃ念入りに吟味するようにしてるんですが、その目で見ると、この狐茶屋は——」
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