48人が本棚に入れています
本棚に追加
龍王様とはまさに荒魂。炎のような激しさと氷のような酷薄さを、御身に宿されし御方でございます。
御仕え申し上げた者たちは皆どこかで龍王様の逆鱗に触れ、儚く命を落とすのが常でした。
けれども白龍と黒龍だけは双頭の龍のごとく互いを支え合い、補い合いながら、長きに渡り過酷な日々を生き抜いておりました。
まさに絆が起こした奇跡と、そう申すより他はございませぬ。
やがて長い長い時が経ち、そんな二柱の献身が報われる時が参りました。
龍王様の覚えめでたい白龍と黒龍は、成体の龍となった祝いに棲み処を拝領することになり、川澄山中の龍神池を賜ったのです。
無論、龍王様がお休みになられたあとの僅かの間ではございました。
けれども……今日も無事に務めを終えたと、深く清らかな龍神池の底で安堵の息をつくそのひと時は、白龍と黒龍が苦難の果てに勝ち得た安らぎの時——二柱が初めて知る、幸せの時だったと申せましょう。
最初のコメントを投稿しよう!