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3 本当の元凶
アルシエルとクロアが再会したその頃。
シェルハル王国はその日まで。実に、平和に過ごしていた。
古い昔、聖女が施したと言い伝えられている“聖女の護り”という結界が、近年になって綻びてしまい。それが響いて魔族の侵入を許し、魔族による虐殺が頻繁に起こっていた。
何度、“聖女の護り”の要である『石碑』の警備を強化しても、いつの間にか『石碑』の位置をずらされてしまい、そのせいで効力が弱くなってしまい、新たな魔族が侵入していく。指定の位置に『石碑』がなければ、“聖女の護り”は機能しないのだ。
警備を担当している兵士に聞いても、何も覚えていないという。
犯人はこの国の人間か? と誠密やかに囁かれいてたが、結局不明なままだった。
これに国王も頭を悩まされ、軍事力の強化や兵士を増やしたりして、なんとか国の平和を維持していた。これから国王の息子であるウルドとクロアが結婚するという重大な年にだ。
そんな中で、ある事が告発された。
クロアの妹であるカーラが、クロアが全ての元凶であると言ったのだ。
『石碑』の警備兵を色仕掛けで落とし、囲まれて鳴きまくって男の欲求を満たさせ……その代わりに『石碑』をずらさせてもらう事を黙らせていたという。
そうして魔族を侵入させて、その魔族との行為にも許していたと。その証拠も、カーラは用意してそれをまず、ウルドに見せたのだ。
それを聞き見たウルドは、クロアの悪行に憤怒し、憎悪し、軽蔑した。
すると、そんな様子を見ていたカーラは囁いた。
「そう、お姉様はこんな悪逆非道なんです。だから――
そんな悪人との思い出を洗い流すために……一晩、どうでしょうか?」
と。
まるで見計らったように。
そうしてカーラはウルドと宿屋で一晩を過ごした。
「ああ、カーラ。私は間違っていたようだ……君と共にこれからの人生を歩もうと思う」
「ウルド様…………はい、私、とても嬉しいです」
そうして、ウルドはクロアに見えないところで何度もカーラと密会し、一晩過ごして、そしてカーラから新たな証拠を貰っていた。
証拠が十分すぎるほどに溜まり切った時、ウルドは国王にそれらを提出した。
それらの証拠も証言を聞いた国王も、「恩を仇で返しおって……ッ‼︎」と憤慨し、今すぐにでも切り掛かりそうな勢いだったものの、法に則ってクロアを事実上の死刑宣告にすることにした。
そうして準備して、あの日の夜会にその刑は執行された。
クロアが兵士によって追い出された後、夜会は歓喜の祝福で満たされた。
「流石はウルド様だ‼︎」
「頭脳明晰にして容姿端麗の貴公子!」
「未来を担う国王と王妃に相応しい‼︎」
万歳合唱。
夜会が開かれたこの王宮に轟いていた。
「ウルド様……私、とても幸せですわ」
「カーラ。あの罪人のことは忘れて、君と共に幸せに過ごそう」
「……はい! 嬉しいですぅ」
抱き合う二人。
それを祝福する、カーラの家族を含んだ貴族一同。
こうして、魔族の侵入を許していた罪人を断罪した。彼女の企みに加担した兵士らも国外追放の刑に処され、国境まで連行された。もうこれで『石碑』を動かされることはないだろう。
少し複雑な彼らの関係だが、これで彼らとシェルハル王国は平和な日々を送ることができた――
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