5人が本棚に入れています
本棚に追加
「あのセリフ」
次はひなたから口火を切った。
「随分本気っぽかったけど」
「え?」
「鬼に、私に向かって言ったセリフ」
「……あぁ」
子供たちの声援を貰う前口上が、ひなたにはどこか引っかかっていた。まるで、あの喫茶店で一方的に吹っ掛けた自分への反論のように聞こえて。
「そうだね」
笑いながら、しかし淀みなく彼女は答えた。そしてよくよく考えれば、あの日のことで向こうから安易に謝ろうともしてこない。
「……そういうとこだよ」
「え?」
ひなたは小さく呟いた。彼女への強い対抗心の正体が、分かった気がした。
「私も謝らないから」
「……うん! その方が、朝倉さんらしい!」
その言葉に、ひなたは少し口角を上げた。
最初のコメントを投稿しよう!