3人が本棚に入れています
本棚に追加
「影山さんお疲れ様でした!」
「お疲れ様でした」
「さすが影山さん!」
スタッフが彼のもとに集まる。水のペットボトルを飲む彼に、ひなたも近づいた。
「影山さん……お疲れ様でした」
「なんとかなりましたね、朝倉さん!」
「は、はい……」
ひなたは彼が何者なのか分からなかった。営業部の先輩でありながら、堂々とステージに立って場を盛り上げている。
「アナウンサー、みたいでした」
ふと、その言葉が口を衝いた。影山は優しく微笑み返す。
「今日影山さんいなかったらどうなることかと思いましたよー!」
スタッフが一人彼に話しかけた。
「さっすが、『カゲアナ』ですね」
「……カゲアナ?」
聞き馴れない言葉にひなたは聞き返した。リュックの緑の冊子をめくる。
「カゲアナは営業用語ではありませんよ」
「違うんですか、影山さん?」
「テレビには出ないけれど、知る人ぞ知る影のアナウンサー。皆はそれを『カゲアナ』と呼ぶんです」
影山は彼女に深々と礼をする。
「さっきの『最敬礼』返しです」
「い、いや! あれはそういうわけじゃ!」
「改めまして、影山満。営業部員であり、マンカイ放送のカゲアナです」
最初のコメントを投稿しよう!