3人が本棚に入れています
本棚に追加
「じゃあ改めて、朝倉さんの配属を祝って、乾杯!」
「「「乾杯!!」」」
局から歩いて5分ほどの居酒屋『アルコールマウンテン』は、連日会社員と学生で入り乱れる。運よくその一角を押さえ、今宵ひなたの歓迎会が催された。営業に関わる部署の社員・総勢20名ほどの大所帯である。
尤も、彼女が配属されて既に1ヶ月が経っており、実際には遅いくらいだ。部長の猫田が発する陽気な号令で、皆もジョッキを掲げる。
「……ありがとうございます」
先輩の社員が続々と彼女のもとに集まる。
「ごめんねー。店が空いている日に合わせたら1ヶ月近く経っちゃって」
「ここは是非、朝倉さんに来てほしかったから」
「でも、ランチは行ってたし、許して!」
「いえ、そんな……やっていただけただけでも、ありがたいです」
にこやかに返すが、正直まだ顔と名前が一致していない人も多く、彼女はどこか気まずさを感じていた。比較的面識のある影山をあてにするも、何やら猫田と談笑している。
「そういえば、聞いたんだけどさ」
先輩の一人が口火を切った。
「朝倉さん、アナウンサー職受けてたって本当?」
「え?」
ぎこちない笑顔が、素に戻る。
「人事の奴が同期でね。そうなの?」
「……はい」
その返事に、周りが沸いた。
最初のコメントを投稿しよう!