第1話「光と影のアナウンサー」

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「朝倉さん、郵便です」 「はい、ありがとうござい……えっ?」  デスクに大量の封筒が置かれる。それらは全てひなた宛てのものだった。正体が分からず、とにかく主催の放送局に送ってきたようである。中身を開けると、「ファンになった」「鬼のまさに『鬼気迫る演技』に感動した」という熱いファンレターばかりである。 「うわっ、すごいな朝倉さん!」  先輩社員も目を丸める。 「これは、また招いちゃったかなあ」 「猫田部長、さすがです!」 「君、変なものも招いたって言ってなかったっけ?」 「えぇ、そうでしたっけ?」  隣を見ると、影山も自分に届いたファンレターを一つ一つファイルに入れている。 「朝倉さんも次第に慣れますよ」 「は、はい……」 「でも部長、これでCM読める人が増えましたよ」 「あ、確かに! 朝倉さん、引っ張りだこになりそうだなあ」  マンカイ放送営業部・朝倉ひなた。今日からカゲアナとしての新たな日常が始まろうとしていた。
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