3人が本棚に入れています
本棚に追加
「ごめんね、アポ同行できなくて。どうだった?」
「ダンゼン工業さん、来月からレギュラーで出稿決まりました」
「おめでとう!!」
猫田が手を叩いて喜ぶ。周りの社員からもどよめきが上がった。
一方のひなたはというと、喜べないでいた。それは、単に何がすごいのか分からないからというわけではない。正確に言えば、その青年が放つ爽やかさに圧倒され、動けないでいた。
確かにルックスも抜群だが、それよりも彼女が惹かれたのは、彼が発する声だ。
(発声が、凄い!?)
淀みない喋りに、完璧な滑舌。そして公共放送お墨付きの読み下したイントネーション。試験のためスクールにも通い、耳を鍛えてきた彼女には分かる。
(この人……なんでこんな!?)
そして、彼は自分の隣にカバンを置いた。間違いなく、先ほど話題に出ていた先輩だと確信した。
「すごいな、これで今期3件目の新規じゃないか」
「部長のアドバイスのおかげです……ん?」
青年は、一人俯いている茶髪ショートボブの見慣れぬ女性に気づいた。
「はじめまして」
間近で話しかけられ、彼女はびくついた。恐る恐る、彼の目を見る。
「は、はじめまして……」
「今日から来る、新人ですね?」
「はい。あ、朝倉、ひなたです……」
「隣の席の、影山満です。宜しくお願いします」
ひなたは畏まって、深々と頭を下げた。
「……最敬礼?」
最初のコメントを投稿しよう!