第1話「光と影のアナウンサー」

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「ごめんね、アポ同行できなくて。どうだった?」 「ダンゼン工業さん、来月からレギュラーで出稿決まりました」 「おめでとう!!」  猫田が手を叩いて喜ぶ。周りの社員からもどよめきが上がった。  一方のひなたはというと、喜べないでいた。それは、単に何がすごいのか分からないからというわけではない。正確に言えば、その青年が放つ爽やかさに圧倒され、動けないでいた。  確かにルックスも抜群だが、それよりも彼女が惹かれたのは、彼が発する声だ。 (発声が、凄い!?)  淀みない喋りに、完璧な滑舌。そして公共放送お墨付きの読み下したイントネーション。試験のためスクールにも通い、耳を鍛えてきた彼女には分かる。 (この人……なんでこんな!?)  そして、彼は自分の隣にカバンを置いた。間違いなく、先ほど話題に出ていた先輩だと確信した。 「すごいな、これで今期3件目の新規じゃないか」 「部長のアドバイスのおかげです……ん?」  青年は、一人俯いている茶髪ショートボブの見慣れぬ女性に気づいた。 「はじめまして」  間近で話しかけられ、彼女はびくついた。恐る恐る、彼の目を見る。 「は、はじめまして……」 「今日から来る、新人ですね?」 「はい。あ、朝倉、ひなたです……」 「隣の席の、影山満です。宜しくお願いします」  ひなたは畏まって、深々と頭を下げた。 「……最敬礼?」
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