第1話「光と影のアナウンサー」

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 聞けば、空野は影山たちと反対方向から移動していたが、その道中で事故が発生し、渋滞してしまっているという。既に30分が経つが、全く車が動いていない。 「ど、どうするんですか!? 影山さん!」  思わず、応援に来ている側の彼に尋ねる。 「……もしかすると、そのまま事故のリポート取材に入る可能性はありますよね」 「じゃあ、空野さんなしでやるしかないか……」 「そんな……!?」  ひなたの顔に冷や汗がじんわりと浮かぶ。既にステージの周りには、空野の登場を心待ちにしている姿が見える。マスコットがいるとはいえ、それだけでは持たないだろう。  配属初日早々に、結構なトラブルに立ち会ったものである。 「中止……中止するしか、ないんじゃないですか……?」  少し躊躇したが、ひなたはそう言った。スタッフも困った表情である。 「いやいやそれは! これだけ来ていただいているし……」 「で、でも……空野さんが来ないなら、誠心誠意、謝るしか……」  自身ではどうにもできない事態に、彼女は翻弄されていた。当然ひなたも本意ではない。ただ、この状況を突破できる解決策を見いだせない以上、頭を下げるしかないと考えていた。どうにもならないものは仕方ない。一般の社員である以上、そういう立場なのだ。それが社会人というものだと自分に言い聞かせるのだった。 (私が……私が、アナウンサーなら……) 「すみません、台本あります?」
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