あと一回だけ

1/1
前へ
/1ページ
次へ
 僕は彼女を誘ったことを後悔していた。 「もうやめようよ……」 「ええ、まだ来たばっかなのにー」  ごねる彼女。しかしこれ以上ここにいるのは危険だ。 「んー、じゃああと一回だけ、それならいいでしょ?」 「……じゃああと一回」  僕が“それ”を渡すと、彼女は気分よさげな笑顔で受け取る。  画面と共に曲が流れると、彼女はソファーから立ち上がり、自信満々な顔で口を開いた。  が、彼女の歌声が響いた瞬間、僕は『演奏中止』を押した。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加