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その1 電撃戦と塹壕戦理論
ー フロストヴァルド王宮図書室 ー
ルーナが王宮の図書室で講義を始める。
「古より伝わるアイゼンガルド帝国は数々の戦いを経験し、その中で洗練された戦術理論を生み出しました。特に有名なのが『電撃戦』と『塹壕戦』という二つの概念です」
アッシュは、メモを取りながら、ルーナの言葉に耳を傾けていた。
「これらの戦術は、かの有名な戦術家、我が先祖、異世界人である「シュタインフェルド」=石原莞爾が体系化したものです。彼は、技術革新と戦術の進化の関係に着目し、時代と共に戦術がどのように変化していくかを鋭く分析しました」
ルーナは、黒板に簡単な図を描きながら説明を続けた。
「まず、『電撃戦』ですが…これは、敵の不意を突いて、一気に戦線を突破する「スピード重視」の戦術です。強力な魔法や、突出した戦闘能力を持つ兵士による電撃的な攻撃で、敵陣に混乱と恐怖を巻き起こし、一気に勝負を決めるのです」
アッシュは、目を輝かせながら、ルーナの言葉に聞き入った。
「魔法であれば例えば、空から隕石を落とす『メテオストライク』などが挙げられます。メテオなどは一般の兵などは、ひとたまりもないでしょう。前線はほぼ全滅です」
アッシュは、ルーナの言葉に、息を呑んだ。
「…しかし、アッシュ様、安心してください。私たちには、魔法の防御手段もあります!」
ルーナは、力強く宣言した。彼女の表情には、揺るぎない自信がみなぎっていた。
「例えば、地の精霊魔法は、確かに地味で、目立たない魔法かもしれません。
しかし、その応用力は他の属性魔法とは比べ物になりません!敵の攻撃を防ぎ、味方の安全を守り、戦況を支える…まさに、『縁の下の力持ち』なのです!」
ルーナは、熱弁をふるった。地の精霊魔法術式はルーナの専門領域だった。
「例えば、敵の攻撃を防ぐ基礎魔法『プロテクション』や、敵の侵入を防ぐ『オブストラクション』、地面を隆起させる「アースウォール」、または陥没させて敵の進軍を阻む『ランドコラプス』など…」
ルーナは黒板に、それぞれの魔法の効果を図解し続けた。
アッシュは、真剣に頷いた。
「どんなに強力な攻撃魔法や、屈強な戦士の攻撃でも、地の精霊魔法の防御を突破するのは容易ではありません!私は、この地味魔法が、戦争の勝敗を左右する力だと信じています!派手な攻撃魔法も重要ですが、地形を操作する地味魔法も大事なのです!電撃戦を魔法技術によって阻止し、塹壕戦に持ち込むのです!!!」
アッシュはふと質問をする。
「ルーナ、もしその魔法を破られたらどうするの?」
という言葉に、ルーナは「持病」の白昼夢に襲われる。
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