被害

3/3
前へ
/5ページ
次へ
避難所へ向かった。 もう、何もかも失った。 なにもかもと言っても、雫のことだけであり、ぼくの人生、雫が全てだったことを物語ってある。 視界右半分が黒で覆われている。 負傷した足でぎこちなく歩く。 避難所まで向かう途中、 ひとつひとつの家から悲鳴嗚咽が鳴り響いていた。 時に完全に崩れている家もあり、 時に火事を起こしている家があり、 その家から火事が燃え広がり、 二次被害となっていた。 まさに”地獄”だった。 津波も来なかったので、避難所での生活は直ぐに終わった。 みんなみんながいつも通りの生活に戻っていく。 雫の葬式もいつの間にか終わり、1人暮しが始まる。 無気力に、まるで幽霊のように生きた。 生きる意味を見失い、行く宛ても見失い、何をすればいいのかも分からず、産まれたての子鹿のように、辺りをさまよった。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加