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避難所へ向かった。
もう、何もかも失った。
なにもかもと言っても、雫のことだけであり、ぼくの人生、雫が全てだったことを物語ってある。
視界右半分が黒で覆われている。
負傷した足でぎこちなく歩く。
避難所まで向かう途中、
ひとつひとつの家から悲鳴嗚咽が鳴り響いていた。
時に完全に崩れている家もあり、
時に火事を起こしている家があり、
その家から火事が燃え広がり、
二次被害となっていた。
まさに”地獄”だった。
津波も来なかったので、避難所での生活は直ぐに終わった。
みんなみんながいつも通りの生活に戻っていく。
雫の葬式もいつの間にか終わり、1人暮しが始まる。
無気力に、まるで幽霊のように生きた。
生きる意味を見失い、行く宛ても見失い、何をすればいいのかも分からず、産まれたての子鹿のように、辺りをさまよった。
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