誰かからの電話

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 僕は、少しお酒を飲んで駅から少し行った団地の横の道を歩いていた。  そこの通りの街灯は、間隔は広く普段の夜歩く時には、避けていたのに酒のせいか、ついついそんな道を通ってしまった。  その通りには、緑色の公衆電話があり、よくある怪談話の様に今回もそれは鳴った。後、テレビか、何かでみたのだが、人間はまぁ普段ちょっとくらい場違いな場合でも電話に出てしまうものらしい。僕の場合ちょっとどころの騒ぎではないが、やはりお酒のせいもあり電話に出てしまった。  電話に出ると相手の電話の主は、僕に言った。 「ねぇ……(とどろき)さん久しぶりですね」  そしたら、すぐに良いは覚めた。僕の名前が、轟だからだ。ここで、2つの選択を迫られる。相手の名前を聞くか、そのまま切るか。まぁ……なんですか?と、相手に問う選択もあるが、こういう場合大抵は、俺、もしくは私か誰かわかる?だと思うので選択しに入れない。後、僕の考えつかないものも選択肢に入れられないのではぶく。  それで、僕の選択しは、もちろん切るだ。なんで、こんな夜中にこんな風に電話をかけて来る相手と話す必要があるのかはわからない。なので、切った。そうすると、公衆電話は、ふたたび鳴りだす。  僕は、その場から走って逃げだすがすぐ走るのを止めた。僕の携帯電話が鳴りだしたからだ。暗闇の中で光る携帯の画面を見ると、数字の部分だけ黒く塗りつぶされている様に黒くて数字が判別出来ない。  僕は、観念してもと来た道を戻ると交番を、横断歩道の向こうに見る事の出来る位置まで戻った。交番の前に中肉中背の警官が立って、辺りを見回している。この位置なら最悪。最後は彼がどうにかしてくれるだろうと思ったが、だが、それが僕の最良の物になるかどかはわからない。彼が僕の何かの目撃者にならない事を願いつつ、仕方なしに携帯へ出る。 「轟ですが、どちら様ですか?」 「ヒビキです」 「そっか……ヒビキさんか、もしかして俺の幼馴染の響さん?」 「うん……」  おれの幼馴染の響は、俺の母親に言わせれば、絶賛婚活パーティー連戦中だぞ。どうなってるんだ? 「久しぶりだな、で、どうした?」 「私ね……今、婚活してて……」 「そうなのか……シラナカッタナ……」 「で、ここから凄く大事な事なんだけど、あと一回、婚活パーティーの予定があってそれが丁度、8回目の婚活なの……。8はおばあちゃん末広がりで縁起がいいって言ってたじゃない……。それでどうしても8回目の婚活だけは、成功させたいの!だから大和(やまと)くんのお母さんにパールのネックレスを借りて、何としても婚活を成功させたいの、だから持って来てお願い!明日17時、丁度に私の家に来て欲しいの」 「わかった。わかった。17時だな」 「やっぱりやまくんは、優しいね」 「はいはい、わかった。切るぞ」  電話は、切れた。もう俺の電話も、交番の電話もならない様だ。本当に、響か何者かわからないが、やまくんって俺のあだ名まで知っているのは薄気味悪さがますばかりなので、約束を守らねばならないようだ。実家に電話して隣の様子をそれとなく聞くが、特に変わりはないようなので、明日帰る事と、パールのネックレスを貸して欲しい事を伝えた。 「パールのネックレスなんてあったかしらね?」  と言う母親に――。 「あったらでいいからで、探しておいて」と、伝えるとしぶしぶながら了承を得ることが出来た。後は、響に確認が取れればいいが、なにぶん遅い時刻なので明日の約束の後に電話をする事にした。         ◇◆◇◆◇  次の日、休みのはずが、会社の急の電話に対応し無駄時間を取ったため、当初の予定の約束が終わったのは、15時近くになって慌てて駅に向かい電車に飛び乗る。  1時間かかって家に着いた時は、約束の時間に間に合った事の安堵感よりただ、疲労していた。  鍵を開け家に入ると、二階から声がして行ってみると、母親がタンスを開け探し物の真っ最中だった。 「あったわ、これね。大和(やまと)、覚えてる? このパールのネックレス」 「ごめん母さん、もうすぐ17時だからそろそろ響に、これ渡しに行かないと――」 「へぇ――じゃ、頑張って行ってきなさいよ」    盛大な誤解をしているだろう、母親を残し響の家に行く。昔は立派な日本家屋だったが、改装工事をしたという響の家には、もう昔の面影はない。ちゃんとチャイムまでついている。  チャイムを押す前に、女性が慌てて出て来て盛大にぶつかると、俺の持っていたパールのネックレスの紐が切れ、こっちも盛大にパールがばらまかれる。 「ああ――ごめんなさい。こんな大事なものを私たら……どうしょう……」    僕と彼女は、パールを拾うが、なかなか数が見つからない。どこにもないのだ。 「響、大丈夫だ。ちょっと落ち着こう」 「えっ……大和(やまと)くん? どうしたの!?」  この様子から、やはりあの電話は響がかけてきたものではないようだ。 「ある人が、響の8回目の婚活パーティーにこのパールのネックレスを貸したいらしく、俺に電話をかけてきた」 「えっ!? 何で回数まで……。もしかして、うちの両親が!?」  響は、目をパチパチさせて俺を見る。 「それは、わからないが……婚活パーティーいいのか?」   「ああぁ……」携帯を見た響は、悲痛な声をあげ、がっくりしょげた。    どうにもパールは、見つからないのでうちでお茶でも?と、響がいいだし、響についてキッチンまでついて行くことになった。キッチンには、響の母親が居て俺達を見て驚いたがまあそうなるだろう。婚活に戦いに行った娘と久しく会ってなかった隣の息子が一緒に現れたのなら。 「響!? 間に合わなかったの? って……やまくん?よねぇ――お母さんのとこには顔出したの?でも、へ――」    こっちも大概な誤解をして、わかったような顔をするのが……うちの母親と仲がいいだけあるな……。  響が、お茶を入れているとおれの置いた、ネックレスの箱を響の母親がしげしげと見つめる。  「おばあちゃんのパールのネックレスじゃない?、おばあちゃんがやまちゃんにあげたやつ」 「そうなんですか?」 「う……ん、ちょっと開けていい?」 「どうぞ」  響の母が、ゆっくりと箱を空けると、響が入れたお茶を持ってくる。 「そうそう、これこれ、ここのはしっこ、響がネックレス勝手に借りて、そのかわりクレヨン入れたから、もも色がとれなくなっちゃったのよね――、でも、何故7個しかパールが無いの?」 「俺、1個持ってますよ」  そう言って箱にパールを入れた。響の母が、何故か少しにゃりと笑った。 「残りは、私がぶつかった時にどこかへ行ってしまったの……」 「響は、本当にそそっかしいわねぇ……」と、呆れたよう言うと、俺の方へ顔を向け「で、やまちゃんはどうしたの?」と響の母が聞くので、昨日の出来事をそのまま話した。 「ちょっと昨日かかって来た、携帯番号見せて…………あら、やまちゃんちの前の電話番号うちよ」 「え? 見せて……本当だ……、でも、夜なんて誰も電話かけてないよね?」 「じゃ――あれよ? おばあちゃんが、孫娘の婚活が心配になって電話をかけて来たんじゃないの? この8の連続は出来過ぎだし、でも、まぁこれを見越して、やまちゃんにパールのネックレスあげてたら少し怖いわよね。うちにはありがたいけど……やまちゃん逃げれなそうで……」  そう言って少しにゃっと……わらった。そう言えば……思い出したけどおばちゃんも俺に「いいものあげるね。おばあちゃんの大事な大事な宝物」ってネックレスの箱を、俺に渡す時、同じ笑い顔をしてたんだった……。      おわり
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