大切な人 side 日比野玲司

2/3
前へ
/44ページ
次へ
「日比野先生」 「ん?」 「医師会から連絡がありました。あのゲーム会社の産業医から外れたそうです。他が決まったらまた書面にてご報告頂けるそうです。取り急ぎご連絡まで」 「……そうか。ありがとう」 …終わった。 やっとあの会社から離れることができる。 由香里の居たシステム部は本当に酷かった。 毎月残業が100時間超えなんて有り得ない。 産業医の職場巡視で毎回、システム部の労働状況を見直せと指示を出していたにも関わらず、一切改善されなかった。 精神を壊した人間は面接を受けさせればいい。 あの会社はそんなスタンスだった。 僕の元に来る頃には壊れ切っている人が殆ど。 …本当に…酷い話だ。 …今でも脳裏に焼き付いている、由香里の死んだような目。 もう二度と…あんな表情はさせたくない…。
/44ページ

最初のコメントを投稿しよう!

62人が本棚に入れています
本棚に追加