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第一話 アルビとレオ、あるいは魔女屋敷の青薔薇の話
アルビとレオは双子なのにちっとも似ていない。
アルビは他の生徒より体が小さく、レオは他の生徒より体が大きい。
小柄なアルビの方が勝ち気で、大柄なレオの方がおっとりしている。
アルビがレオの後ろに隠れたらすっかり見えなくなってしまう、とはデネボラの言だ。
「デネボラの奴、自分だっていつもつるんでる二人より背が低い癖に、」
「だったらそんな奴の云うことなんか放っておけば良かったのさ。どうして云い合いした挙句にアルビが魔女屋敷へ盗みに入らなきゃいけない羽目になるんだよ。」
「ああまで云われて引き下がれるわけないだろ。それにたった一輪花を取りに行くだけだぜ。大袈裟なんだよレオは。」
魔女屋敷の庭にだけ咲くという青い薔薇。
それを取ってこられたらアルビが学校一勇気のある生徒であることを認め謝罪する、と云うのがデネボラの約束だ。
魔女屋敷は町外れの高台にある瀟洒な建物なのだが、生徒達の間では魔女が住んでいる屋敷だと噂されている。
黒いローブに身を包んだ影を見たとか、狼の吠える声を聞いたとかいう噂は山ほどあるのだが、実際に魔女に会ったという生徒の話は聞いたことがない。
『つまり皆怖くて確かめられない臆病者だってことだ。』とアルビは思った。
『つまり魔女に会ったら帰ってこられないのじゃないか?』とレオは思った。
「ねえアルビ、やっぱり魔女屋敷には近づかない方がいいよ。」
「平気だって。怖いならレオはついて来なくていいさ。」
さっさと魔女屋敷への道を上って行くアルビを、やはりレオは放っておけず後を追いかけたのだった。
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