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木々の葉が繁った昼なお暗い狼の森。
双子は泉の周りに生えているという狼尾草を目指して奥へと進んでいく。
「危ないものに遭遇したら思いっきり遠くへ投げろって云われたけど、狼自体にぶつけるんじゃないのか?」
ルゥから貰ったお守り袋を矯めつ眇めつ眺めながら、アルビは疑問を呟く。
「会わないのが一番だけど……喋りながら歩いた方がいいのかな、」
本当に危ないなら子供達だけで行かせはしないだろうと思いつつも、レオは不安そうに辺りを見回している。
泉自体は意外とあっさり見つかり、狼尾草は充分収穫することができた。
後は来た道を帰るだけ、と少し安心した双子の前に人影が立ちはだかった。
「お前達、誰だ。」
フードを深く被ったその男は低く唸るような声でそう尋ねてきた。
恰好からして狩人のようだが、どこかおかしい。
はあはあと息が荒く、時折体がぐらついている。
「俺達、プエル・アストラ校の生徒です。ちょっと狼尾草を採りに来ただけで……」
「狼尾草! 狼か。狼の臭いがするぞ。」
狩人は益々息が荒くなり、猟銃をこちらに向けた。
銃口はぐらぐらと揺れているが、今にも引き金を引いてきそうでアルビ達は戦慄する。
「早くお守りを……!」
「あっち行け、――!」
現代では表記しづらい言葉を叫びながら、アルビは思いっきり遠くへお守りを投げた。
「アゥッ、バウワウワウッ!!」
狩人がお守り目掛けて駆け抜けていった隙に、双子は脇目もふらず出口へと走っていった。
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