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「どこ行くんだよアルビ、正門はあっちだろ、」
「お行儀良く呼び鈴を鳴らしたら、魔女が快く迎え入れてくれると思うか?」
塀を辿って裏口を探す道すがら、向こうにちらほらと見える赤や白の薔薇を見上げる。
「あれが青薔薇だったら話は早いんだけどな。」
「本当に青い薔薇なんてあるのかな。見たことないけど。」
「それを育てられるから魔女なのさ。」
やっと見つけた通用口に手をかけ、扉が壊れて立て掛けられただけのものであることに気づく。
「随分不用心なんだな。」
「俺達を捕まえるための罠かもしれないぜ。」
「だったらやめとこうよ。」
「ここまで来て帰ったらクラスの笑い者だ。」
屋敷の庭は色とりどりの薔薇があふれていたが、青い薔薇は見当たらない。
温室を見つけたアルビは『貴重な薔薇が大事に育てられているに違いない。』と考え、躊躇いなく入っていった。
そこにも小振りな白い薔薇があるだけだったが、どことなく他の薔薇とは違うようにも見える。
屋敷から誰かが出てきたことにいち早く気づいたのはレオだった。
「魔女が来た! 早く逃げよう!」
慌てたアルビがせめて手近な薔薇を持って帰ろうとして、指に棘が刺さってしまう。
「あっ、」
瞬間、痛みと共に目眩を感じて座り込んだアルビに、レオが駆け寄った。
「アルビ、」
「レオ、」
見上げてきたアルビの顔を見て、レオは小さく悲鳴を上げた。
アルビの青い瞳が真っ白になってしまっていたからだ。
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