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「まったく君達ときたら、魔女だのなんだのと騒いで勝手にやって来て、迷惑なことこの上ないよ。」
「けど、魔女なんだろう? こんな不思議で危険な植物、魔法でもなければできるはずがない。」
アルビの悪びれぬ物云いにレオは肝を冷やす。
黒衣は相変わらず不機嫌そうではあるが、白衣が悠然としている辺りまだ危険な状況ではないのだろうと思えるのが救いだ。
「魔女の家なら不法侵入していいと君達の学校では教えているのかい?」
「それは悪かったけどさ、俺には青薔薇が必要なんだ。一輪でいいから譲ってくれよ。」
「青薔薇なんてそれこそ青い目の人間から吸い取らなければないし、あったとしても目上の者に対する言葉遣いも分からない者に譲ろうとは思わないね。」
アルビはすがるような目で白衣の方を見たが、白衣も心当たりがないらしいと知ると頭を抱え、教師に聞かれたら反省文を書かねばならない言葉を使わないようにする自制心を放棄した。
「仕方ないよアルビ、皆にはありのままを話せばいい。」
「何を云ったって、手ぶらで帰ってデネボラが納得する訳ないだろ。あいつに大きな顔をさせておくなんて屈辱だ、」
「へえ、そのデネボラとやらはそんなにいけ好かない奴なのかい、」
双子がいかにデネボラに閉口しているかを口々に訴えると、黒衣は思いの外悪戯を思いついたような笑みを見せた。
「彼等に手を貸してあげるんだね。」
「そろそろ噂を剪定する頃合いかと思っただけさ。そうだね、ここは植物学博士の家だということにしよう。訪問したら博士は快く迎え入れてくれて、お土産にこの白薔薇の鉢植えを貰ったと云えば良い。」
黒衣が取り出した小さな薔薇の鉢植えはセロファンに覆われていた。
「ただし、決してセロファンを外して薔薇に顔を近づけてはならない。デネボラ君にもそう忠告してくれたまえ。」
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