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「それで? これが博士から貰った薔薇だと。」
翌朝三人の少年―デネボラ、ギェナー、サディルは疑わしそうに鉢植えや互いの顔を見交わした。
「ああ。博士は良い人だったよ。別に魔女屋敷でもなんでもなかったという訳さ。青薔薇なんて最初からなかったんだ。」
「決してセロファンを外してはならない、か……、そらっ、」
「うわあっ!」
セロファンを破り始めたデネボラを制しようとした途端に鉢植えを鼻先に近づけられ、驚いて仰け反ったアルビは倒れそうになる。
レオが受け止めたおかげで倒れはしなかったが、デネボラ達の嘲笑にアルビの顔が赤らんだ。
「ハハッ、何か仕掛けでもしてあるのかと思えば、本当に危険な薔薇だと思っていただけなのかい? こんな小さな薔薇に顔を近づけたところで……ほら、何も起こりやしない。実に芳しい香りだ。」
『やった、』
これ見よがしに薔薇へ顔を近づけてみせたデネボラは、双子の青い瞳が輝いたことに気づかなかった。
デネボラ達の高笑いは直に教師がやってきた事で収まり、いつも通り点呼が始まった。
風向きが変わったのはデネボラが呼ばれた時だ。
返事をしようとして喉に違和感を覚えたらしく、咳払いをした途端苦しみだした。
吐き気を堪えるように必死に口を押さえて身悶えていたが、ついに耐え切れず開いた口から花びらが零れ出た。
涙目になってえずくデネボラに慌てて駆け寄ったギェナーとサディルは、彼の口の中から小さな白い薔薇の咲いた蔓薔薇が出てくるのを見て悲鳴を上げた。
騒然となった教室の中で、アルビが愉快そうに笑うのをレオはたしなめたが、「いい気味だ。」というアルビの言を否定することはなかったのだった。
Fin
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