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第二話 魔法使いの弟子
教室の移動中にぶつかられ、アルビが振り返った先にはデネボラのせせら笑いがあった。
「おっと、失礼。こちらに人がいることに気が付かなかったよ、ちっぽけアルビ君。」
「吐き気がしてよろけたんじゃないのか、薔薇吐きデネボラ。」
勿論彼等のやりとりは教師が現れるまで続いた。
元々彼等に仲の良い時期などなかったが、薔薇吐き騒動があってからは益々デネボラ達との諍いが増えていた。
魔女屋敷の黒衣から貰った鉢によってデネボラの内に根付いた薔薇は、吐き出されるとすぐに溶けてしまった。勿論鉢植えを調べても普通の薔薇でしかなく、何かの見間違いだったのではないかという結論に落ち着いたのだ。
「父様に云いつけてやるからな!」と息巻いていたが、結果が芳しくなかったのであろうことは先刻のような小競り合いしか持ちかけてこないところで窺える。
とはいえ、勝ち誇ってばかりもいられない。人数で云うとこちらの方が分が悪いし、一々突っかかってこられるのも鬱陶しい。
「俺達には敵わないって思い知らせてやるんだ。」
面白い悪戯を思いついた時の顔をするアルビに、レオは不安半分、好奇心半分で尋ねる。
「そんなの、どうやって?」
「魔法使いの弟子になるんだよ。」
魔法使い、と云われてレオは黒衣の如何にも気難しげな顔を思い浮かべた。
「まさか、魔女屋敷に行くつもり、」
「それ以外に当てがあるか?」
「とても弟子になんてしてくれないと思うよ。」
「行ってみないと分からないだろう。どんなに気難しく見えたって、お年寄りっていうのは元気な子供とのふれあいを求めているものなのさ。」
疑わしげに見ながらも、レオが反対することはなかった。
少年なら誰だって、魔法使いの弟子になってみたいものなのだ。
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