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「あいつら絶対魔女達に取り入って味方につけてやろうとしてるぜ。まさか、デネボラに手を貸したりなんかしないよな、」
客間に通され、紅茶と共に出してもらった高級そうなチョコレート菓子を頬張りながら憤慨するアルビに、黒衣は冷ややかな目を向ける。
「別に僕は君達の味方になった覚えもないがね。それに誰かさんと違って彼等はとても良い子だった。ちなみにそのお菓子、デネボラのお土産だよ。」
一瞬動きの止まったアルビだが、お菓子に罪はないと判断したのか、再びチョコレート菓子に手を伸ばした。
「このフロランタンも美味しいよ。君達のお母さんの愛情がこもっている。」
「ありがとう、ええと、」
「そういえば名前を云ってなかったね。俺のことは、ルゥとでも呼んでもらおうかな。」
「ありがとうルゥさん。フロランタンはママの一番得意なお菓子なんだ。」
ルゥとレオの穏やかなやり取りを尻目にアルビは黒衣に向けて訴える。
「良い子に見せかけるのが奴等の手口なんだ。大人相手には優等生ぶるんだから全く性質が悪い。」
「まあ確かに、君等よりは彼の方が余程問題を抱えているようだが……」
「そらみろ!」
「それより君達は何をしに来たんだい? 茶菓子の匂いを嗅ぎつけた訳でもないだろう、」
そう問われて、双子は居住まいを正す。
「俺達を弟子にしてください。」
「嫌だ。」
きっぱり断られたが、想定内とばかりアルビも食い下がる。
「なんでもやります! 魔術書の整頓や、魔道具や箒の手入れとか、魔法薬の材料採取とか、」
「どうせ気に入らない奴を魔法でやっつけてやりたいとかそんな動機だろう。そんなのに付き合ってやる暇はないよ。」
「まあまあ。やらせてみたら意外と才能があるかもしれないよ。君の姉さんたちだって双子だろう。」
「あれはひとつ。この子たちはどう見たってふたつだろう。別に適性は感じないね。」
二人の会話を聞いて、そういえば、とレオがアルビに囁く。
「前サードって呼ばれてたよね。上に二人いるからサードなのかな。」
「サード・ウィッチか。なんかサンドウィッチが食べたくなる。」
「そろそろ帰る相談かい?」
「いや! 弟子にしてくれるまで帰りません!」
うんざりした顔の黒衣に、ルゥが再びとりなすように声をかける。
「それじゃあ試験を行うのはどうかな。狼尾草が足りなくなりそうだって云ってただろう。彼等が無事に狼尾草を取って来られたら弟子にしてあげたら。」
「彼等を狼の森に行かせるつもりかい。……お前が人に甘いのか厳しいのか分からなくなってきたよ。」
狼の森とは街外れの方にある鬱蒼とした森のことだ。その名の通り狼が生息していて危険だと聞く。
「なに、お守りがあるから大丈夫だよ。どうかな君達。やっぱり狼が怖いかい、」
「行かせてください! 俺達、試験に合格してみせます!」
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