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風が告げる未来・第二話
第二話: 風が告げる未来
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風子は、父の日記を手にしたまま、長い時間それを眺めていた。彼女の心の中には、かつてないほどの混乱と問いが渦巻いていた。「全てが過ぎ去る」という父の言葉は、まるで風が自分自身の運命を予見していたかのように響いていた。
翌日、風子は学校を休み、父の足跡を辿る決意をした。日記の最後のページには、父が最後に訪れたとされる場所の名前が書かれていた。それは、彼女の住む街から遠く離れた、山奥の小さな村だった。風子は、その村へ行けば何か答えが見つかるかもしれないと信じていた。
その村へ向かう途中、風子は不安と期待が入り混じった気持ちでいっぱいだった。バスの窓から見える風景は、次第に都会の喧騒から離れ、静かな田舎の風景へと変わっていった。風は穏やかで、木々の葉が静かに揺れていた。まるで彼女を導くように、優しい風が吹き続けていた。
村に着くと、風子はまず村の神社を訪れた。父の日記には、その神社が彼にとって特別な場所であったと書かれていた。神社の境内は静まり返り、古い木々が立ち並んでいた。風子はその中を歩きながら、父の記憶を探るように周囲を見渡した。
突然、彼女の前に一人の老人が現れた。老人は村の神主であり、風子がここに来ることを予見していたかのような態度で彼女を迎えた。彼は風子の顔を見つめ、静かに語り始めた。
「君のお父さんは、この村で風を追い求めていた。彼は風が運んでくるものに何か特別な意味があると信じていたんだよ。」
風子は驚いた。父がこの村で風に何を求めていたのか、彼女にはまだ分からなかった。しかし、神主の言葉に導かれるように、彼女は神社の奥にある森へと進んで行った。
森の中は、まるで時間が止まっているかのように静寂に包まれていた。風子は、父がここで何を見つけたのかを知りたくてたまらなかった。彼女は歩き続け、やがて一つの古びた祠にたどり着いた。その祠には、風の神が祀られていると言われていた。
祠の前で、風子は何かが胸に込み上げてくるのを感じた。父がここで何を祈り、何を願ったのか、彼女には分かり始めていた。風が全てを連れ去ると同時に、新たな道を示す存在であることに気付いたのだ。
その時、突然強い風が吹き抜け、彼女の髪を激しく揺らした。風子は目を閉じ、風の中に父の声を聞いたような気がした。
「風子、君は強く生きなさい。この風が運んできた未来を、恐れずに受け入れるんだ。」
彼女は涙をこぼしながら、父の言葉を胸に刻んだ。風が何を連れ去ろうとも、彼女には歩み続ける力があると信じられるようになった。
その日から、風子は風を恐れることをやめた。彼女は風が告げる未来を受け入れ、前へ進むことを決意した。彼女の旅はまだ始まったばかりだった。
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