第二話 ライバル

5/5
前へ
/72ページ
次へ
「四月に第三営業部に配属してからずっと思ってたんだけど、如月の出社、いつもギリギリだよな」 如月はPCから顔を上げた。「それがどうした」って、すました顔してやがる。 「ギリギリではないだろ。五分前にはこうして始業してるんだ」 あぁ! このスカした感じ。インテリぶった黒縁眼鏡め! カンに障る。 「そうは言うけどな、電車が遅延したらどうする?」 「地下鉄だからそれはない。大丈夫! 剛田こそ、今日は遅かったけどどうした?」 そうか、コイツは地下鉄出勤だったか。ぬかった。畜生! 「……っ、電車の遅延だ」 悔しいが、それ以上は返す言葉もない……。ダメだ。仕事に集中しよう。  真里菜たんが斜め前のデスクについた。そう、この席順も気に食わない。なんで真里菜たんと如月の野郎が隣同士なんだ。ああ、腑に落ちない。苛々する。ついでに如月のこの感じ。こんな可愛い女の子が隣に座っているのに、それを気にもとめずにそうやって何か物思いにふける。女性社員たちはその様子を「ミステリアス」だなんて言って騒ぎ立てるが、ただボーっとしているだけじゃないか。真里菜たんの前だ。いいところを見せてやろう。 「お前、仕事に集中しろよ」 言ってやった。呆気に取られたその顔、いいぞ。ざまあ見ろ。
/72ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加