第四話 飲みニケーション

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   七月二十九日(月) 如月颯太  剛田を頑張らせないようにするにはどうすれば良いか、ここ数日ずっと考えていた。しかしそれは、実際それほど難しい事ではなかった。  あの堅物を軟弱物にするには、女だ。そう、女。スナックに、いや、スナックはダメか。年齢層がなあ。やっぱりキャバクラだな、その後の風俗というのが王道の流れだろう。目一杯に残業するアイツの業務時間を減らす事で足を引っ張ってやるのだ。ああいう真面目なやつに限って女に弱かったりする。そう、免疫がないからだ。一度キャバクラと風俗の沼にハマれば仕事など手につかなくなるだろう。  さて、今日も夕暮れ時だ。林田部長からの目線を感じる。きっと飲みに誘われるんだろうな。実際、林田部長からの誘いは嬉しい。夕飯代が浮くどころか、タダ酒が飲めるからだ。  まあ実際問題、男二人のカラオケは堪えるし、スナックでおばちゃんママを相手にするのも少し抵抗がある。ママさんからは何だかいつも説教されるし。しかし、運が良ければキャバクラにも連れて行ってもらえる。それが最高の流れだ。  普段はそこで終わる。しかしかつて、俺のような付き合いの良い若手が多かった頃は、そのあとにピンク色のサロンという、名ばかりの飲食店に行ったり、公衆浴場という名の混浴っぽい最高のサービスを受けられるお店に行ったり、それはもう楽しかった。  そんな時、それに絶対に付き合わない男、それが剛田健介という男だった。今日こそ、何とかしてそのクソ真面目な化けの皮を剥いで水商売の女に沼らせてやる!
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