第四話 飲みニケーション

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 素早く残務を処理してエントランスに向かった。ああ、予感的中だ。如月の野郎、あいつハメやがったな。集合五分前なのに、既に林田部長と楽しそうに歓談してやがる。全く、二人とも暇だなあ。 「えっ、今日のゲストって剛田君?」 部長が驚いている。どういう事だ? 部長が驚いている事にこちらも驚いているのだが……。 「そうですよ部長、同じ部署なのに、まだ剛田と飲んだ事ないじゃないですか。親睦を深める良い機会かなって思って、誘っちゃいましたー!」 「えぇ……」 部長の間延びした悲しそうな、いかにも「期待外れ」みたいな声が漏れた。あからさまに嫌な顔はしないで欲しい。さすがに傷つく。 「と、いうことで、部長、今日はどこにします? この前の中華にします?  それとも海鮮居酒屋にします?」 「そ、そうだな、剛田君、何か食べたいものとか、あるかな?」 気遣いだ、それも上辺だけの。ああ、気まずい。 「何でも食べます。お任せします」 「じゃあ海鮮居酒屋にしませんか? あそこの日本酒、全国の地酒が揃っていて最高ですよ。しかも飲み放題!」 如月、お前には聞いていなかっただろう。なぜこいつがしゃしゃり出るのか。 「おお、さすが如月君! 良いじゃないか! まだ月曜日だけど、関係ないよな! ジャンジャン飲もうか!」 まったく、この二人は苦手だ……。
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