第四話 飲みニケーション

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「おい、如月」 「どうした?」 「つまみは?」 「ああ、枝豆と冷やしトマト頼んだ。今混んでて焼き物系は時間かかるってさー。だからすぐ出てきそうつまみを頼んどいた」 なんだ、いつの間に。如月にしては気が利くじゃないか。そうこうしているうちに日本酒が届いた。 「はい、スペシャルゲストの剛田くん、どうぞどうぞー」 何だか今日の如月は妙にもてなしてくるな。ああ、純米大吟醸のどっしりと、でも軽やかでフルーティーな香りが堪らない……。そうだそうだ、林田部長に注がないと、ああ、如月め、先を越された。こんな時に限って仕事が早い。 「では、今後の剛田くんのご活躍を祈願して、かんぱーい!」 だから、なんでさっきから如月がこの場を仕切っているんだ。部長も部長だ、ヘラヘラ笑ってるけど、それでいいのか? 全く、この部署はどうなっているんだ。 「剛田君、どうしたんだい? このお酒、イメージと違った?」 ああ、また部長に気を遣わせてしまった。 「いえ、大好きなお酒ですのでお気遣いなさらないで下さい。頂きます」 お猪口の半分くらいを口に含んだ。ああ、この芳醇でいてキレのある、そして最後に華やかな香りが鼻を突き抜けてゆく……。極上だ……。空きっ腹には少々堪えるが、これは美味い。次の一口でお猪口は空になった。 「おー剛田くん、いける口だねえ!」 「剛田君、なんだ、飲めるんじゃないか!」 部長は知らないだろうが、俺は大の日本酒好きなんだ。こんな美味い酒、抗えない。 「あーあ、もう徳利三つとも無くなっちゃったよ。部長、次、行きましょうか」 「そうだな! 次も日本酒のセンスの良い剛田君に選んで貰おう」 「じゃあ、次はこの山廃仕込みを」 「りょーかーい……。すみませーん! 注文いいですかー!」
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