第六話 東雲の景色

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「あー、図星だー! どんな恋愛ドラマ観るんですか?」 動揺するな私、動揺するな……。 「別に、何でも良いでしょ?」 「えー、先輩、さっきからつまんないですよー。ちなみに、僕は今『恋の不時着』にドハマりしてまーす」 何だって? 分かり合えた仲間だったのか……。私も好きだなんて今更言えない……。ああ、やっぱり私、如月君は苦手だ。どうも彼を前にすると調子が狂う。 「先輩って、何でジムでランニングするんですか? 別に外のその辺、走れば良いじゃないですか?」 次から次へと、何なのこの子は。私のプライベートゾーンにズケズケと……。 「べっ、別に、何となくよ」 「あー、そっか、外は信号が多いと走りにくいかー」 正解! 悔しいけど正解……。 「でも、せっかく会員費とか払ってジムに通うなら、他の運動もすれば良いのに。例えば、ベンチプレスとか」 如月君、ホント何なの? ベンチプレスで胸筋鍛えてバストアップ、ってか? うっせえわ! 私のムネが小さいって言うの? 失礼しちゃう! 「別に、いいでしょ! 私の勝手じゃない!」 いかんいかん、つい声を荒げてしまった。ああ、また、またシュンとしちゃってる。何これ? 私が悪いの? もうやめて、その子犬のような、それでいてミステリアスな表情。お願いだから、もう私の心をこれ以上、かき回さないで! 「もう分かった! 今日、一緒に走ろう!」 あれ、何で誘ってるんだ私? どうしてこうなった?
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